歌枕をテーマとした展覧会。期待していたけれど、あまり面白いとは思わなかった。展覧会のテーマには馴染みにくいのかなあと。分量的には新書1冊くらいはほしい主題で、サン美規模の展覧会だと表面をなぞるのが精一杯という感じがした。作品もいまひとつ惹かれるものがない。各所から作品を借用した特別展。
「第一章 歌枕の世界」では歌枕を描いた屏風の展示。吉野・龍田・宇治。後期では武蔵野が扱われたものもある由。記号的な表現。
「第二章 歌枕の成立」では古筆を中心とした展示。勅撰集を重視して、その古筆切を選んでいた。なぜか銀箔が撒かれている逸翁の関戸古今。羅文が美しいMIHOの筋切など。ここは展示替え多い。
「第三章 描かれた歌枕」では、歌枕の絵画表現を見ていく。中世から江戸時代にかけての記号的な表現と実景や写実を意識した表現と。英一蝶の《朝妻舟図》(板橋区立美術館蔵)がわりと好き。
「第四章 旅と歌枕」。平安貴族にとっては単なる記号的地名で実際に訪れることは殆どなかったけれども、後世になって実際にその地を巡る人たちが出てきたことについて。柳沢吉保《六義園記》(郡山城史跡・柳沢文庫保存会蔵)が目についた程度。
「第五章 暮らしに息づく歌枕」は関連する工芸品の展示。長良橋の廃材を利用した文台とか。記号的な表現にも変化が見られることとか。